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平成24年度調査


2012年度は、第6回首都圏調査および第7回原子力学会員調査を実施しました。


首都圏住民に対する社会調査

名 称:第6回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2013年1月5日~1月22日
対 象:首都圏30km圏内
方 法:割り当て留め置き法(地点別・性年代別回収条件は下表を参照)
回収数:500名




原子力学会員に対する社会調査

名 称:第7回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2013年1月4日~2月5日
対 象:日本原子力学会員
方 法:無作為抽出 1400名に対し、郵送調査
回収数:559名(回収率39.9%)


分析結果の概要


 
首都圏住民と原子力学会員との比較分析および経年比較

a) 東京電力福島第一原子力発電所事故以降の意見
 福島第一原子力発電所の事故は人災であるとの認識など、首都圏住民と原子力学会員が同様の認識をしている点も見受けられたが、原子力発電の安全性、有用性、ならびに福島第一原子力発電所の作業員の被ばく問題などについては、首都圏住民と原子力学会員との間に大きな認識の乖離があった。
 首都圏住民においては、原子力発電の安全性、有用性を否定する認識が強く、作業員の被ばくについてもほとんどすべての者が問題視していた。
 これに対して、原子力学会員においては、原子力発電の安全性、有用性を肯定する認識が強く、作業員の被ばくについても首都圏住民ほどには問題視されていなかった。東日本大震災の被災地瓦礫を自分の地域で受け入れることについては、ほとんどすべての原子力学会員が肯定していた。
 原子力発電の安全性、有用性などについては、原子力学会員に対しては前年度も同じ質問をしている。前年度に比べて2012年度調査においては、原子力発電の安全性、有用性などを肯定する原子力学会員の比率が高まっていた。このことは、原子力学会員が原子力発電の安全性、有用性などについての自信を回復しつつあることの表れではないかと解釈できる。

b) 社会全般に関する関心・不安について
 2012年度調査において、首都圏住民が関心を持っていた事柄として、「政治や経済」「自然災害」「原子力施設の事故」「病気」「資源やエネルギー」「地球温暖化などの環境問題」などが挙げられる。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後に行われた2011年度調査において、首都圏住民の関心として「原子力施設の事故」「自然災害」「放射性廃棄物」「原子力」が上昇する変化がみられたが、2012年度調査においては2011年度調査から大きな変化はなかった。
 原子力学会員が関心を持っていた事柄として、「原子力」「資源やエネルギー」「政治や経済」「科学技術」「原子力施設の事故」「地球温暖化などの環境問題」「放射性廃棄物問題」「外交」が挙げられる。原子力学会員の関心にも2012年度調査においては2011年度調査から大きな変化はなかった。
 また、首都圏住民が不安に感じていたものとして「自然災害」「政治や経済」「病気」「原子力施設の事故」などが挙げられる。前年度から比較的に「政治や経済」と「原子力施設の事故」の不安が低下した。
 原子力学会員が不安に感じていたものとしては「政治や経済」「資源やエネルギー」「病気」「自然災害」「外交」「戦争やテロ」などが挙げられる。前年度から比較的に「政治や経済」の不安が低下したのに対して、「外交」の不安が上昇した。
 今年度の変動は、前年末の衆議院選挙の結果などが反映しているのではないかと思われる。

c) 原子力の利用・有用性について
 首都圏住民において、2010年度までと比べて、2011年度において原子力発電の「利用」が減少し、「廃止」が増加した(利用20%強、廃止50%弱、中間30%)。判断を保留している中間層はそれまでよりも減少したもののそれなりの割合で存在していた。今年度は、前年度とほとんど同じ結果であり、この1年間に首都圏住民の認識に変化は見られなかった。
 また、原子力発電の有用性の認識も、2010年度までと比べて、2011年度において減少したが、今年度も前年度とほとんど同じ結果であった。原子力発電の有用性についてもこの1年間に首都圏住民の認識に変化は見られなかったといえる。
 関連して、近い将来に原子力発電に代われる発電方法があるとの認識が2011年度に増加したが、今年度はこれがさらに増加した。原子力発電に代わる発電方法に期待が高まってきているといえる。
 特に、首都圏住民には原子力発電よりも新エネルギーへの期待が増大してきている。新エネルギーの割合は、20年後には「3割から5割」と予想している者は首都圏住民の30%を超え、「1割から3割」も加えれば60%程度となった。一方、原子力発電は20年後には「1%以下」と予想している者が1割を超え、「3割以下」と予想する者が全体の6割程度であった。
 原子力学会員においては、大勢は、原子力発電の「利用」の認識、原子力発電の有用性の認識を示している。2011年度において2010年度までと比較してその割合が減少したが、今年度には増加に転じている。
 地球温暖化への貢献、代替電源の困難さ、再処理による燃料確保の有用性との認識は昨年度までと引き続き高位に安定した意見として見られる。同時に、将来における原子力発電の役割を低く見積もるようになっている。また、新エネルギーの開発の必要性を認めつつあるが、20年後における原子力発電の代替は火力発電ではないかと考えている。
 首都圏住民と原子力学会員を比較すると、2011年度においては、原子力発電に対する利用-廃止の立場や原子力発電の有用性に大きなギャップがあったものの、原子力学会員にも原子力発電の推進や原子力発電の有用性を積極的に肯定しない者が増加した。今年度には、前年度の増加分が戻り、2010年度までの認識に戻りつつある。その結果として、首都圏住民と原子力学会員との間の認識の乖離は広まったといえる。
 また、原子力発電がなくても日本は経済的に発展できるかとの質問に、首都圏住民においては、発展できる(33%)と意見を保留する(43%)者が大半であったが、原子力学会員は発展できない(84%)とする者がほとんどであった。首都圏住民と原子力学会員との間の認識の乖離を示している。
 将来の原子力発電は、その割合が減少するだろうという意見について、首都圏住民と原子力学会員で方向は同じである。しかし、代替エネルギーの有無、将来のエネルギーについては大きなギャップが存在し、首都圏住民は新エネルギーに期待する一方、原子力学会員は代替できるのは火力発電であると考えている。

d) 原子力の安心/安全/信頼について
 原子力発電の安心-不安の意見について、2010年度までは首都圏住民のおよそ半数が不安との意見であったが、2011年度には7割程度が不安と回答し、大幅の増加となった。具体的な事例については、長期間運転している発電所の安全性低下や、地震に対する原子力発電所の危険性という認識は、前年度までも大きかったが、2011年度は急激に大きくなった。2010年度まで判断を保留していた層をかなりの割合で取り込んだといえる。今年度も2011年度と同様の結果であり、この1年間に大きな変化はなかったといえる。
 原子力学会員においても、2011年度において2010年度と比べると、安心という意見が減り、およそ6割にとどまるとの変化があった。2010年度までは長期間運転している発電所の安全性低下に関しても、これを否定する者が多かったが、2011年度はその割合が逆転した。また、地震に対して原子力発電所は危険という認識に対して否定的だが、2011年度はその程度が減少した。今年度は、2011年度よりも安心という意見が増加、地震に対して原子力発電所は危険という認識に対しても否定が増加した。
 首都圏住民と原子力学会員の意識にある大きなギャップは、前年度よりも拡大傾向にある。
 原子力に携わる人たちの安全確保の意識や努力を信頼については、2010年度までは徐々に信頼側に変化していたが、2011年度にその傾向は急激に変化し首都圏住民において大幅に低下した。今年度には、その信頼はさらに低下していた。
 原子力学会員においては、大勢は信頼側であるが、2010年度までと比較すると、2011年度にその度合いが減少した。今年度には、前年度よりもわずかながら信頼が回復していた。


e) 高レベル放射性廃棄物の処分について
 首都圏住民において、高レベル放射性廃棄物の処分は早急に実施しなければならないとの認識が増加しており、同認識に対する前年度までの推移が加速している。同時に、首都圏住民において、高レベル放射性廃棄物の最終処分場決定は困難と思われている。しかしながら、この項目については、2011年度には「わからない・しらない」という者が減り、今年度には、高レベル放射性廃棄物の最終処分場決定は困難ではないとする者が首都圏住民に増加した。放射性廃棄物への一般関心・一般不安も増加していることと整合性の取れた結果であり、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を決定すべきであるとの認識が首都圏住民に広まり始めている可能性がある。
 原子力学会員においては、高レベル放射性廃棄物の処分は早急に実施しなければならないとの認識で高位定常状態といえる。また、最終処分場決定に関して、2010年度までも困難と認識されていた。2011年度はこの認識がさらに増大したものの、今年度には2010年度の水準にほぼ戻っていた。


  
原子力規制委員会への期待

 環境省の下に新たに設置された原子力規制委員会に対して、首都圏住民が期待していたことは、「正確なデータの発信」「事故やトラブル時の分析・評価」「原発の運転が安全に行われているかの監視」などであった。
 これに対して、原子力学会員が原子力規制委員会に期待していたことは、「正確なデータに基づく判断」「中立な第三者機関としての立場」「適切な規制を作ること」などであった。


   
原子力に携わっている人たちや組織に対する印象

 いわゆる「原子力ムラ」についての認識を調べるために、今年度、原子力に携わっている人・組織に対する印象をたずねる質問を行なった。首都圏住民に対しては、原子力に携わっている人・組織に対する印象についてたずねた。原子力学会員に対しては、原子力に携わっている人・組織に対して一般の人たちがどのような印象を持っていると認識しているかをたずねた。
 「原子力ムラ」について、確かに首都圏住民の3割は原子力に携わっている人・組織の価値観・考え方が一般の人たちとずれていると認識していた。原子力に携わっている人たちは自由に意見が述べられないのだと認識していた者も首都圏住民の5割強であった。このことは、原子力に携わっている人・組織を首都圏住民が特殊であると認識している可能性を示している。
 しかしながら、原子力学会員においては、原子力に携わっている人・組織の価値観・考え方が一般の人たちとずれていると一般の人たちに思われているとの認識は、8割弱に達していた。同様に、原子力に携わっている人たちは大企業に所属していて、恵まれていると思われていると認識していた、あるいは、原子力に携わっている人たちは自分たちだけが利益を得ていると思われていると認識していた原子力学会員の割合は、そのように思っていた首都圏住民の割合の2倍ほどもあった。原子力学会員は、首都圏住民が思っている以上に、一般の人から原子力に携わっている人たちや組織は特殊であると思われていると思い込んでいることが明らかになった。これは、一種のエリート意識の裏返しであるとも解釈できよう。
 また、首都圏住民の過半数は、原子力に携わっている人たちに感謝していた。首都圏住民の7割弱は、原子力に携わっている人たちや組織は大変な仕事をしており、苦労をしていると認識していた。
 それにもかかわらず、原子力学会員のほうでは、一般の人たちから感謝されていないだろうと思っている者が6割を超えていた。原子力に携わっている人たちや組織は大変な仕事をしており、苦労をしていると一般の人たちから思われていると認識していた原子力学会員は3割弱にとどまり、4割弱の原子力学会員はこれを否定した。さらに、原子力に携わっている人たちに好感を持っていない首都圏住民の割合は2割強であったが、原子力学会員の7割強が、原子力に携わっている人たちは一般の人たちから好感を持たれていないと認識していた。
 原子力学会員は、原子力に携わっている人たちや組織が一般の人たちから受容されていないと強く思い込んでいるが、実際には、首都圏住民は原子力に携わっている人・組織を比較的に高く受容していることが明らかになった。


調査票、単純・クロス集計、分析結果の詳細





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