技術者の倫理レベルの発達過程


以下の説明は、「環境と科学技術者の倫理」、P. A.Vesilind、A. S. Gunn著、 (社)日本技術士会環境部会訳編、丸善 の2.2節をまとめたものである。


技術者としてのモラルは、 一般的モラル(共通モラル)の発達 と対応して考えると、次のように発達するといえる。

第1段階専門職以前当面の利益確保優先
第2段階出世期待の忠誠
第3段階専門職企業への忠誠第一主義
第4段階企業・職の評判重視
第5段階原理指向専門職公衆の福利優先
第6段階普遍原理獲得


第一段階では個人の利益しか考えない。
第二段階で「企業への忠誠は出世に結びつく」といった関係を認識する。
第三段階で企業への忠誠を第一に考えるようになる。 自分の行為と社会や環境との関係などには思い至らない。
第四段階で専門家の自覚を持つようになる。 責任ある専門家として振舞うことが企業の評判を高めることにもつながること、 その専門職の社会的地位向上にも役立つことを認識する。 このような専門家はそれぞれの専門職の倫理規程に従って行動する。
第五段階では公衆の福利への貢献を第一に考えるようになる。 専門職のきまりが社会の価値観に反する場合は社会の価値観を優先させるようになる。 ただし、きまりが社会のコンセンサスになっている限りはその正当性に 疑問を抱かない。
第六段階に至って、公平・公正・おもいやりといった普遍的ルールに従うようになる。 段階が進みにつれ、何が正しいかについて より深く考えた上で行動を決定するようになる。

技術者としてのモラルも、年齢や経験を重ねるとともに上へ進むものとは限らない。 経営者としての判断も要求されるようになると、かえって退化することもありうる。 それを防ぐためにも、またより高い段階へ進むためにも、事例学習が有効である。 事例学習の時期は、技術者になる前の学生時代であっても良いし、 ある程度の経験を積んでからでも良い。

技術者は物事を単純に割切りたがる傾向がある。 自然科学では簡明な基礎方程式をもって複雑な自然現象が説明できる。 この印象が強烈なので、「いろいろな考え方がある」という当り前のことを忘れ、 一面的な見方で作られた「きまり」にさえ従っていれば倫理的だと思い込む。 責任ある技術者になるためには、事例学習による不断の訓練が必要である。

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